12月中旬に入ろうとする頃、母は、
「もうすぐ家で生活することになったら、階段もあるし、段差もあるから、しっかり足を鍛えておかなければ。」
という気合いで、とうとう気功一回40分を、朝、昼、晩と立てるようになっていました。
人間、その氣になれば、89歳でも、ここまでできるものなのだなあ、と感心してしまいました。
そして、大変お世話になった老人ホームでは介護の方や入居者の方と別れを惜しみつつも、自宅での生活に戻ることができました。
母は絶対に二階で寝るという信念を曲げないので、階段を登れることは必須のスキルです。
家で階段を登ってみると、ゆっくりですが登れました。
それから、足はこびも骨を折る前より、なんだか軽いみたい。と不思議がっています。
そして、幸い、地域包括支援センターの方にとてもよいケアマネージャーさん、ヘルパーさんを紹介していただき、介護計画をしっかりたてていただいて、安心の自宅での生活をはじめることができました。
気功をがんばってくれて、たくさんのエネルギーを蓄えてくれたおかげか、とてもスムーズに事は進んだのです。
「なんだか、ついてるみたい。」母は言うのでした。
母は弱る事のなかった足腰と、それから幸運までも、強い意志で気功を練習することで手に入れたようでした。
年末に一緒に外食をしたあと、本屋に行きたいと母は言いました。
母は大変几帳面で五年日記をつけています。その日記帳がなくなるので、新しい五年日記帳を買いたいとのことでした。
私がみつくろって、いくつか母に見せると、
「あ、もう三年日記でいいかしら?89歳だし…。」と少し自信無げに言います。
私は「いや、五年でしょう。」と自信満々に言うと
「あら、そう。え?じゃあ、次は三年の方がいいかしら。」というので、
「次も五年で。」と断言すると、
母はちょっと困ったように、けれどもうれしそうに笑うのでした。